採用時は労働条件の明示が必須
開業時にはスタッフの採用が必要不可欠となりますが、今までスタッフの採用に関して苦い経験をされたという院長先生のお話を聞くことがあります。
せっかく採用したスタッフがすぐに離職をしてしまい、採用活動にかけたコストや時間が無駄になってしまったというお話が特に多いです。これらの苦い経験の多くは、採用時に行う労働条件の説明や労働契約書の締結に不備があったことに起因します。労働条件の説明や労働契約書の締結に不備があると、トラブルが起こり、スタッフの離職につながってしまいます。
苦労して採用したのに、すぐに辞められたら大変だな・・・
労働条件のトラブル事例
事例①
残業や休日出勤をしてもらう可能性があることを伝えていなかったため、いざ残業を依頼すると、スタッフから断られてしまった。
事例②
給与明細を渡した翌日に、「毎月固定の月給制と思っていましたが、時給制になっていました。時給制だと稼働日数によって給与額が変動し、生活が不安定になるため退職させてもらいます。」とスタッフから申出があった。
事例③
スタッフにある業務を依頼したときに、「採用時にそのような業務は伝えられていませんでした。その業務をしなければならないのであれば、給与額を上げてください。」と言われ、当該業務を院長先生自らが行うことになった。
上記のようなトラブルを避け、スタッフの離職を予防する上で労働条件の説明及び労働契約書の締結は重要となります。それではどの程度の範囲まで労働条件を説明すると良いのでしょうか?
労働条件に納得してもらったうえで雇用契約をしないと、トラブルの原因になってしまうね・・・
明示すべき労働条件
労働基準法第15条では、採用時に以下の労働条件について明示をするように定めています。
①~⑥は必ず明示しなければならない事項で、⑦~⑭は制度を設ける場合に明示しなければならない事項です。
労働条件通知書などの書面で上記の労働条件を提示し、労使双方の認識に齟齬が生じないようにすることが必要です。
項目は多岐にわたるな・・・
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就業規則を作成しスタッフの定着へ
採用時にしっかりと労働条件を明示することが、スタッフの早期離職を防ぐ上で重要であることはお分かりいただけたかと思います。更にスタッフが安心して働ける職場づくりを目指すにあたり、就業規則の作成も非常に重要となります。
就業規則では労働条件通知書などで網羅しきれない労働条件や服務規律を細かく定めることになります。例えば、出退勤の打刻方法、有給休暇を消化する際の手続き、勤務時に遵守すべき服務規律、手当の支給要件など多岐に渡ります。これらを就業規則上で明確にすることにより、スタッフは安心して働くことができ、定着率の向上にもつながります。
労働基準法第89条では、10人以上のスタッフを雇用されている場合は就業規則を作成し、管轄の労働基準監督署に届け出るように義務付けているため、10人以上の採用を想定されている場合は是非ご対応ください。また、スタッフが10人に満たない場合であっても、スタッフが安心して働くことのできる職場づくりを目的として就業規則の作成をご検討いただければと思います。
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